虚ろなる涙 その4
徒然なる不幸。(吉田秀和の手記参照)
その晩は、男の、最も親しく、かけがえのない輩(トモガラ)が、寂寞(セキバク)のしじまの彼方へ旅立っていく、やるせなく、哀しく揺蕩(タユタ)う、永訣の夜だったのだ。何者かが、凍える闇を徘徊し、沈黙の呪縛を呼び覚ます。それらは、我らを覆い、窒息させ、奈落へと突...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 8
Route vers la liberte(自由への道)。
アルベール・カミュ(Albert Camus 1913.11.7.-1960.1.4.)の随筆に「シーシュポスの神話(Le Mythe de Sisyphe)」がある。シーシュポスSisyphos(Sisyphus)はゼウスZeusからある山の山頂へ巨大な岩を押し上げるよう命じられており、一日がかりで山頂へ押し上げるのであるが...
微睡日記抄 その6
万物流転、生死、皆、自然なるべし。
「これからの地球は、人口過剰が最も大きな問題となる。放っておけば、人間が犠牲を強いられる辛い、悲劇的な時代が来ます。戦争を起こさず、世界規模の人口過剰を回避する、これが科学技術の重要な目的だと思います。」手塚治虫(1928.11.3.-1989.2.9.)先生は、まだ、科学技術...
イノセントラヴァーズ 2章 innocent lovers chapter 2
1970年2月17日、妹グレース・パトリシアは3年余の入院治療の甲斐も無く、昏睡のまま息を引き取った。10歳だった。既に、余命が尽きようとしていることは分かっていたものの、ペトラたち家族にとって、その喪失は大きな悲しみであり、耐え難い苦痛であった。
ペトラは、最愛の妹の、呆気ない死に、自分の無力感を感じ...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 7
愛こそはベスト。
とにかく、エリック・シーガル(Erich Segal 1937.6.16.-2010.1.17.)のあの疑似的純愛(全くの作り物、という感じ。)の「ある愛の詩(ラヴ・ストーリー)」が世に出たことによって、当時の若者たちがいかに純真無垢であるか、ということが、実しやかに喧伝(ケンデン)され、それを是とする風潮が...
イノセントラヴァーズ 1章 innocent lovers chapter 1
その女性は、身長159㎝と小柄で、就寝は3時か、4時。睡眠時間は4,5時間という、かなりハードな一日を送っていた。緑の党ができて、まだ3年という頃である。ペトラ・ケリー(Petra Kelley 1947.11.29.-1992.10.1.)はブリュッセルのEC(欧州共同体)の職員を勤めながら、地元西ドイツのボンやフランクフルトを駆け回り、...
楽園の破綻 the collapse of paradise extra edition(sonata in fall)
早くも、4月には、それは始まっていた。パンデミック・ショックに見舞われた3月、休業に追い込まれたサービス業の従業員たちを中心に、賃金カットの嵐は吹き荒れ、その大半の30代の既婚者層には、戸建てやマンションを住宅ローンで購入して間もない人も少なくなかったことから、ローンの返済に立ち往生する世帯も出始め...
マートレーヤ 6章 不合理との戦い。Fight against Absurdity。
horror game。
今、終焉を迎えようとしているトランプ政権が、その就任直後、発令した「メキシコシティ政策」に関する大統領令の弊害は罪深く、多くの人々に不幸をもたらした。「メキシコシティ政策」とは、国際NGOがアメリカ政府の資金援助を受ける場合、人工中絶に関するカウンセリングや中絶手術自体を自粛するこ...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その9
溜息の邂逅。
つづれ織り。千紫万紅。
皆が顔色を窺うように、僕も舌なめずりをしながら、彼の後ろをついていく。何が待っているかも判らぬままに。ただ、美味しいものに有り付きたくて。
愛人奇人の集まりだそうです、この世の中は。そうでしたか。知りませんでした。てっきり良人善人の方ばかりだと思ってい...
楽園の破綻 the collapse of paradise その15
7月30日、定例のFOMC(連邦公開市場委員会)は終わり、FRBは、ゼロ金利政策と量的緩和の継続の維持を発表した。発表はこともなげに行われたが、続いて行われたパウエル議長の会見と合わせて考えてみると、今回の会合は、かなり内容の濃い、重要な要素をはらんでいたものと推測される。先ず、概略とポイントを述べる。
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