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議長は、感染拡大に伴う封じ込めの対策によって、景気の持ち直しの動きは6月以降、鈍化したとして、警戒感を露わにし、「ヴィールスの感染者が6月に急増してから、景気回復のペースはスローダウンしている。」と述べると共に、個人消費について、「コロナ危機の減少分の半分は持ち直したが、依然として、旅行や宿泊など、サービス分野の消費の弱さが、物価の下押し圧力になっている。」と懸念を示した。又、「クレジットカードなどの使用状況からみると、消費は6月下旬以降、弱まっている。」とも指摘した。企業の設備投資についても、コロナ危機以前の水準を下回っており、「引き続き、あらゆる政策手段を使って経済の回復を支える。」と強調した。
今回のFOMCのポイントは、次の2点である。一つ目は、コロナ・ヴィールスの脅威は治まる気配はなく、経済回復の道筋はまだ、付かず、大規模金融緩和は継続される。二つ目、コロナ危機以前からの、金融政策の枠組みの見直しの議論を再開し、アフター・コロナの金融市場の健全な発展の基盤作りに着手する。以上であるが、これだけでは、現状追認と抽象的な将来展望と、だけが表明された空虚な、味気ない集まりだったかのように取られても仕方がない。しかし、全米のワイズマン(賢者)の結集である、この会合がそんなお粗末なものでないことは言うまでもない。取り敢えず、パウエル議長の会見を振り返って、彼が如何に、事実に即して、現実に対処しようとしているかを見てみよう。
実体として、「ヴィールスの感染者が増えていることを特に注視している。」「5月から再開された経済活動が、感染拡大によって、各都市で、再び、制限されたり、停止されたりすれば、経済回復には負の圧力がかかる。」「感染者数は重要な変数だ。」実際、今、経済がどのくらい強いのか、「労働市場の5月6月の伸びは続くのかどうか?」を見極めようとしている、と言うのが、議長の現在の見解であり、認識である。ここで、議長は、今回、追加の政策ツールの発表がなかったことに対する質問に答え、次回9月会合(大統領選前、最後のFOMC)にどんな追加ツールが必要か、検討することを示唆した。
すでに周知の通り、金融市場は、予想外の新たな資金の流入によって、急激に回復し、のみならず、過熱状態であり、いくつかの不安材料を残しながらも、株価の上昇は天井知らずの勢いで、並行して、金価格も高騰し、感染拡大が続いているにもかかわらず、3月のような市場の錯乱は起こっておらず、混乱の気配も感じられない。このような市場環境をFRBも容認する姿勢で、議長は9月会合でフォワードガイダンス(既定臨時措置)の一部、微調整に踏み切る考えを強めているもの、と推測される。具体的には、フォワードガイダンスを雇用者数やインフレ率の特定の数字と結びつけ、その数字に到達するまで、金利を一定の水準に据え置く、といったことが考えられる。しかし、まだ、これは、検討課題である。
今回、明らかに、意図的に、見過ごされたのはイールドカーブコントロール(長短金利操作)である。これは、中央銀行が国債利回りのターゲットを決めて、その水準を堅持するため、必要なだけ国債を売買する、というもので、前回、6月会合で話し合われている。今回、全く触れられなかったのは、この政策が、より機動的な政策決定を縛る恐れがあると判断されたからかもしれない。又、金融が十分緩和された状態にある今、そもそも国債利回りを固定化することにどれだけの意味があるのか、判断できないという議論もある。ただ、起こり得る可能性として、金融が逼迫(ヒッパク)した時に、FRBが使えるツールとして準備されているのは自明のことである。
以上、述べてきたように、今回の会合は、当面の課題について、話し合われたこと以上に、今後の展開と非常時への対応という、討議の論点外の課題も意識した、オフレコの話題にも及んだ可能性もある、重要な討議であった。無論、大統領選と、その前後の、経済情勢にも話題は及んだであろう。その内容は知る由もないが、少なくとも、次回、9月会合では、何らかの意思決定が行われることは確実で、その中身を決めるのは、何にもまして、雇用情勢であろうと予想される。それが、何らかの、利上げの気配と経済の回復の兆候を齎(モタラ)すものになるのか、がポイントであるが、今のところ、その可能性は薄い。
最後に、今回ドル不足に備えるため、ドルスワップラインが、数件拡張された。ドルはここ数週間、弱含んでおり、ここ1カ月、ドル指数は大幅に低下している。これは著しいドル安であり、国際通貨体制に影響を与えつつある。ドルの減少は相対的に、ユーロや豪ドルへ資金が流れつつあることを示している。しかし、資金調達を急ぐ新興国の国債発行は増大しており、信認の低下したドルの低迷は、パンデミック対策に四苦八苦する各国の不安材料になっている。