500マイル 第2章 迷宮の十字路 labyrinth crossroad
第2章 迷宮の十字路 labyrinth crossroad
「なぜ,ボクの人生にまで,箍(タガ)を嵌(ハ)めようとするのか!」フランツ(Franz Kafka 1883.7.3.-1924.6.3.)の怒りは,その父親に向けられていた。その父の育った村には支配者が暮らしたと思しき小さな城があり,その土地に閉じ込められた生活の匂いが,まだ残っ...
虚ろなる涙 その4
徒然なる不幸。(吉田秀和の手記参照)
その晩は、男の、最も親しく、かけがえのない輩(トモガラ)が、寂寞(セキバク)のしじまの彼方へ旅立っていく、やるせなく、哀しく揺蕩(タユタ)う、永訣の夜だったのだ。何者かが、凍える闇を徘徊し、沈黙の呪縛を呼び覚ます。それらは、我らを覆い、窒息させ、奈落へと突...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その8
宙空の魔術師 Magician on the Air
序章 魔術師の独白 prologue his confession
ニムロデNimrod(反逆する者)を疎(ウト)んじて、塔を破壊し、言葉を乱した神は、果たして、気高く、誇り高い、御座に座るべき存在なのだろうか?ニムロデNimrodは、闘いを挑んだ由(ワケ)ではない。権力の簒奪者(サンダツシ...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その6
Apocalypsis Opera(喜劇の黙示録)。
廃墟に、雨が降る。雨は、強く、弱く、降り続ける。そこには、以前、アジサイ(紫陽花hydrangea, 花言葉;無情heartlessness )の花咲く小都市の町があった。人影も疎(マバ)らな、静かな佇(タタズ)まいの、穏やかな街並みが続く山裾(スソ)近くの町。何の変哲もない、長閑...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その5
愛は、重要である。何を以って、愛amourと呼ぶのか、それは知る由もないが、それは、重要である。
ホーム。不釣り合いな光景に出くわすこともある、不釣り合いな空間。
しかし、そこは終着駅という、人生の運命的帰着に相応(フサワ)しい施設であるといえる。何故なら、人生とは、必然的偶然の積み重ねに他ならな...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その4
蝶たちは、海を渡る。飛翔し、乱舞し、群れながら、海上の空を行く。そこには、蝶たちにしか、知り得ない見えない航路がある。大空が魅惑する魔性の、秘密の通路(ミチ)が。
夏は、差し当たって、炎暑である。地球上の、半分は、つまり、北半球は著しい渇水状態となっており、水が、液体が、喉(ノド)を潤すそれ...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その3
ヨセミテYosemiteに雪は降り続き、ただ、静寂だけが、山々と渓谷の生き物たちを包み込んでいる。何もかもが眠りにつき、風は止まり、ただ、夜のしじまが、その世界を支配する。倹(ツマ)しい食卓に聖夜の食事が運ばれ、家族は祈りの時を迎えた。ネフィリムNephilimたちの夜は過ぎゆく。
end titleから始まる物語...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その2
ウィーンWienにレンギョウ(連翹、Forsythia;花言葉anticipation、期待)の花が咲くころ、春は徐(オモムロ)にやってきて、立ち止まることなく、そそくさと、足早に去っていく。それは、その地で語られる歴史の如くである。
「時間は止まっていた。」と、詩人は言った。そんなはずはなかった。時間は止まったりしな...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その1
冬は、過ぎつつある。眠りは、まだ深く、夢は、見果てぬ夢として、永劫の時間の内を漂う。
世界は、まだ、未知なるものであった。光も生まれていなかった。しかし、entropyは上昇していた。“熱”が誕生しつつあり、“誕生”が迫っていることだけは予感された。何が現出するのか、は、考えようもない。ただ、それは迫っ...
運命の輪[Wheel of Fate]
混沌の中から全ては始まる。それは、結び付きの始まりである。受精、細胞分裂、胎動。情報の諸要素は、動的な規則性を持つ配置により、体系を形成するに至る。間もなく、個体は誕生の準備段階に入る。不安と期待が交錯する緊張。意識とは呼べない知覚は独立するが、実体は環境に依存する欲求の原型的実在である。誕生に...