サヨナラ参画、また来て視覚(死角) 第三話
会議室を出ても、彼に声をかける者はいなかった。「してやられた。」という心の中の独白も、彼には、全く空疎で虚しい、精神的自傷行為とも言える愚痴でしかない。「何故、最近の女子は人の言うことに牙をむくのか?発言の機会だって与えているじゃないか。」頭の中で自問自答しているうちに、elevatorのdoorは閉まり、...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その2
ウィーンWienにレンギョウ(連翹、Forsythia;花言葉anticipation、期待)の花が咲くころ、春は徐(オモムロ)にやってきて、立ち止まることなく、そそくさと、足早に去っていく。それは、その地で語られる歴史の如くである。
「時間は止まっていた。」と、詩人は言った。そんなはずはなかった。時間は止まったりしな...
宗教改革 利益追求と労働価値の承認、あるいは、その足音;近代ドイツ prologue
中世以降、ローマの収奪は一層激しく、ドイツ諸邦の封建領主たちは苦悩の色を濃くしていた。ホーエンシュタウフェン家の断絶後、帝国の威信は既になく、帝国は主権を喪失し、その後も復権することもできず、有名無実のまま、ハプスブルク家に宗主権を奪われ、領邦は分断され、ドイツの諸権利はローマをはじめとする国外...
聖職叙任権闘争とカノッサの屈辱;ドイツ4
ハインリヒ3世の死は、帝国の政教一致の終局を告げる分岐点であって、その後継であるハインリヒ4世(1050.11.11.-1106.8.7.;在位1084-1105)と教皇グレゴリウス7世(1020?-1085.5.25.;教皇職1073.4.22.-1085.5.25.)との対立は、皇帝と教会の二重権力の限界を露呈させることとなり、帝国は事実上、分裂した。
グレ...
迷走する帝国と十字軍の開始;ドイツ5
政教一致の原則が崩壊した帝国は本来の定型化した統治体制も無論、形骸化し、キリスト教の理念に基づく法治もその体をなさず、ただ漫然と利益誘導されるまま、離合集散を繰り返す烏合の衆になり下がった高位聖職者と領邦諸侯・貴族たちは、さながら、魔界の祝宴場に跋扈する妖怪よろしく、皆、冥府への降下までの一時(...
いでんしじょうほうこうがく その2 諸行夢想の響きあり
進歩か?進化か?当惑の未来。ボクたちは何処へ行ってしまったのか
CloudとSNSのdebris desert(ゴミ砂漠)から、何時抜け出せるかは、とんと見当がつかないが、時間は、そんな些細なことにかかわらず、どんどん進んでいく。現在、確かにcloud service businessは頂点に達しようとしているように見える。しかし、cl...
プロイセン王国の成立、そして、カント哲学の展開;近代ドイツ 2
イマヌエル・カント(Immanuel Kant 1724.4.22.-1804.2.12.)の生まれたプロイセンは、ドイツにおいては、比較的新しい王権国家であって、1618年、神聖ローマ帝国ブランデンブルク選帝侯ヨーハン・ジギスムントがポーランド王国領であったプロイセン公領を同君連合という形で事実上自領に組み入れたことで、同国の骨格が...
教皇庁の腐敗と帝国の動揺;ドイツ3
ザクセン朝の直系は途絶え、若干の混乱はあったが、オットー1世の甥の子であるハインリヒ2世(974.5.6.-1024.7.13.;在位1002-1024)が最終的にその地位を得た。皇帝は先ず、自らの襲職を阻もうとしたザクセン公・ロートリンゲン公ら、諸公の荘園・私設修道院を接収し、司教座教会に委譲した。皇帝は確かに敬虔なキリス...
You need me, perhaps, or I need you chapter 1
猫にコバンザメ。
猫、とはあのネコのことである。ネコは気なり、気まま、気まぐれ、と言われながら、気品ある、気高い動物の仲間に入っていたりするが、実は、夜行性・肉食の、結構wildな動物に分類される、かなり、outlaw的存在である。第一、昼と夜とでは顔つきが変わる。つまり、瞳(虹彩)が明るい時は収縮し、...
サヨナラ参画、また来て視覚(死角) 第二話
「ホラ、全く聞いていないじゃないか!何が中身だ。そういうことは、ちゃんと聞いてから論点整理をして言いなさい。」彼は馬鹿にされている、と思った。それは、しかし、間違ってはいない。事実、彼は議論の範疇(ハンチュウ;category)以前の問題で、今、躓(ツマヅ)いている。「きっと、お疲れなのね。こんなことを...