イノセントラヴァーズ 4章 innocent lovers chapter 4
ミレヴァ・マリッチ 生涯の天使(lifelong angel)。
A・Eとミレヴァは数式を用いて、レーナルトよろしく、宇宙の法則を解き明かそうと、計算に明け暮れる毎日を送っていた。彼らが、よく、夢中で読む本と言えば、新しいタイプの物理学者、マイケル・ファラデー(Michael Faraday 1791.9.22.-1867.8.25.)やジェーム...
イノセントラヴァーズ 5章 innocent lovers chapter 5
ミレヴァ・マリッチ 生涯の天使(lifelong angel)。
A・Eは、親族や世間体を気にする両親のありきたりの要求を呑んで、凡庸(ボンヨウ)な中等学校の教職に就こうとは思っていなかった。彼は若く、ロマンティックで野心に満ち、夢に憑(ツ)かれていた。彼は、自分の可能性を切り開こうと、自らを鼓舞し、能力を引...
イノセントラヴァーズ 3章 innocent lovers chapter 3
ミレヴァ・マリッチ 生涯の天使(lifelong angel)。
1981年12月、雨の夜、プリンストン大学の高等研究所から、大量の書類を運び出そうとする集団があった。彼らは重武装した一群の兵士であり、明らかに合衆国の軍隊ではなかった。
物語は26年前に遡る。20世紀最高の頭脳アルバート・アインシュタイン(Albert Ei...
ザ・コンフィデンス(自信) Confidence in the culture of the New Age その2
世界自身を知れ。recognize the world itself。
盤上を駆け巡る若き棋士、向かうところ敵無し、無敵の藤井聡太(2002.7.19.)の快進撃が注目されている。2007年、夏、5歳の聡太君は母方の祖母から将棋の手ほどきを受ける。簡単なコマの運びと並べ方だったという。そこから始まった将棋ゲームだったが、秋には祖父も歯...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 8
Route vers la liberte(自由への道)。
アルベール・カミュ(Albert Camus 1913.11.7.-1960.1.4.)の随筆に「シーシュポスの神話(Le Mythe de Sisyphe)」がある。シーシュポスSisyphos(Sisyphus)はゼウスZeusからある山の山頂へ巨大な岩を押し上げるよう命じられており、一日がかりで山頂へ押し上げるのであるが...
微睡日記抄 その6
万物流転、生死、皆、自然なるべし。
「これからの地球は、人口過剰が最も大きな問題となる。放っておけば、人間が犠牲を強いられる辛い、悲劇的な時代が来ます。戦争を起こさず、世界規模の人口過剰を回避する、これが科学技術の重要な目的だと思います。」手塚治虫(1928.11.3.-1989.2.9.)先生は、まだ、科学技術...
イノセントラヴァーズ 2章 innocent lovers chapter 2
1970年2月17日、妹グレース・パトリシアは3年余の入院治療の甲斐も無く、昏睡のまま息を引き取った。10歳だった。既に、余命が尽きようとしていることは分かっていたものの、ペトラたち家族にとって、その喪失は大きな悲しみであり、耐え難い苦痛であった。
ペトラは、最愛の妹の、呆気ない死に、自分の無力感を感じ...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 7
愛こそはベスト。
とにかく、エリック・シーガル(Erich Segal 1937.6.16.-2010.1.17.)のあの疑似的純愛(全くの作り物、という感じ。)の「ある愛の詩(ラヴ・ストーリー)」が世に出たことによって、当時の若者たちがいかに純真無垢であるか、ということが、実しやかに喧伝(ケンデン)され、それを是とする風潮が...
イノセントラヴァーズ 1章 innocent lovers chapter 1
その女性は、身長159㎝と小柄で、就寝は3時か、4時。睡眠時間は4,5時間という、かなりハードな一日を送っていた。緑の党ができて、まだ3年という頃である。ペトラ・ケリー(Petra Kelley 1947.11.29.-1992.10.1.)はブリュッセルのEC(欧州共同体)の職員を勤めながら、地元西ドイツのボンやフランクフルトを駆け回り、...
楽園の破綻 the collapse of paradise extra edition(sonata in fall)
早くも、4月には、それは始まっていた。パンデミック・ショックに見舞われた3月、休業に追い込まれたサービス業の従業員たちを中心に、賃金カットの嵐は吹き荒れ、その大半の30代の既婚者層には、戸建てやマンションを住宅ローンで購入して間もない人も少なくなかったことから、ローンの返済に立ち往生する世帯も出始め...