虚ろなる涙 その4
徒然なる不幸。(吉田秀和の手記参照)
その晩は、男の、最も親しく、かけがえのない輩(トモガラ)が、寂寞(セキバク)のしじまの彼方へ旅立っていく、やるせなく、哀しく揺蕩(タユタ)う、永訣の夜だったのだ。何者かが、凍える闇を徘徊し、沈黙の呪縛を呼び覚ます。それらは、我らを覆い、窒息させ、奈落へと突...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 7
愛こそはベスト。
とにかく、エリック・シーガル(Erich Segal 1937.6.16.-2010.1.17.)のあの疑似的純愛(全くの作り物、という感じ。)の「ある愛の詩(ラヴ・ストーリー)」が世に出たことによって、当時の若者たちがいかに純真無垢であるか、ということが、実しやかに喧伝(ケンデン)され、それを是とする風潮が...
幸運の輪[Wheel of Fortune];煉獄への誘い その9
溜息の邂逅。
つづれ織り。千紫万紅。
皆が顔色を窺うように、僕も舌なめずりをしながら、彼の後ろをついていく。何が待っているかも判らぬままに。ただ、美味しいものに有り付きたくて。
愛人奇人の集まりだそうです、この世の中は。そうでしたか。知りませんでした。てっきり良人善人の方ばかりだと思ってい...
微睡日記抄 その5
我と共に来たり、我と共に学ぶべし。
手塚治虫(1928.11.3.-1989.2.9.)先生は筋目正しい、お金持ちのお坊ちゃんとして、何不自由なく、お育ちになった。そこまでは、環境・条件を同じく育った者も大勢いるに違いない。それでは、治虫氏と他の人たちとは、どこが決定的に違っていたのか?それは、実は、治虫氏と心情...
ザ・コンフィデンス(自信) Confidence in the culture of the New Age その1
その「Flamingo」でdanceする男の登場で、多分、時代は変わった。
彼の名は米津玄師(ヨネヅケンシ)(1991.3.10.)。徳島出身のシンガーソングライターだった。所謂、アイドル全盛と思われていた、若者のミュージック・シーンに一石を投じる存在として、米津は登場した。彼には、十分な作品の蓄積と創作力があり、何...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 6
新時代への離脱。escape for the new age。
「天気の子」は、気候変動と、瞑目(迷黙)社会と、新世代による再生の活力を、描いた新海誠(1973.2.9.)氏の快作である。あの「君の名は」の夢想から5年、新海氏は、新作をすべて、本音のスタンスで作り上げた。その作品は、彼らの世代が意識する“セカイ系”であると同時...
微睡日記抄 その4
2020.07.24
トピックス
ささやかな朝餉(アサゲ)。the modest breakfast。
深夜の都会のアパートメントの一室。ローラ・ニーロ(Laura Nyro 1947.10.18.-1997.4.8.)のニューヨーク・テンダベリーが、静寂の中を流れ、1960年代の、あの疲れを思い出させる。行方知れずの明日が、又、始まる。夜は、みっともなく、無残に老(更)けていく。
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疾走する Future Shocker
“So What’s (だから、何だ)?” 男は、藪から棒に言った。誰だって、黙ってはいられない。金輪際(コンリンザイ)、こんな出鱈目(デタラメ)に付き合わされるのは、御免だ。男は、突き上げを食らうたびに、このマスコミ、否、世間の、常識の莫迦(バカ)さ加減に反駁(ハンバク)した。世の中の権威という権威、良識と...
ショートコラムの憂鬱 2020 part 5 子供たちへの物語り a story for all its children
哲学は思弁の歴史である。斯くも鮮やかな堕落。歴史は恥辱に塗(マミ)れ、後退(ズサ)りできず、前進あるのみ。何時しか、事象の細分化の迷宮へと入り込み、その意味付けの言葉の発見にばかり夢中になり、総体としての全体構造を見失ってしまったところで、脳解析による科学的データが提示され、哲学の子供じみた幻想...
“神々”の系譜 その3
1964年、電子音楽の歴史に、画期的な変革をもたらす最終的な楽器、シンセサイザーsynthesizerの元祖、モーグ・シンセサイザー moog synthesizer(アナログ・シンセサイザーanalog synthesizer)が出現した。1950年代、テルミンのモジュールmodule製作で聞こえた電子楽器の発明・製作者、ロバート・モーグ(Robert Moog 1...