マートレーヤ 4章 自由、或いは命 liberty, or life 強いるもの、強いられるもの man for forcing , man for forced
恐るべきことに、妊娠中絶に関する議論が、依然として、前近代的レベルで、現在も行われている。アルゼンティンの新しい大統領は、2020年3月1日、人工妊娠中絶の合法化の法的手続きを進めることを表明したが、これまで、同国では、強制生殖による妊娠と母体の健康に著しい危険がある場合を除き、中絶手術は認められてい...
マートレーヤ 3章 ねじ巻き時計の海 Sea of wind-up Clock
群衆の嘲笑と罵声の中を、綱渡り師は、ただ、黙々と進んでいった。
メタンハイドレート(Methane hydrate)は、海洋に蓄積されたエネルギー資源のうち、最大、かつ、最良の、しかし、最も危険で、憂うべき存在である。係る懸念は、資源調査が大々的に始まった20世紀後半の頃から日増しに強まり、現在では、その開発...
マートレーヤ 2章 ジョセフと子供たち Joseph and children, and Mary
ジョセフは、子供たちと身を寄せ合って、暮らしている。夕暮れの、記憶の階層の中を、その女は、微笑みを湛(タタ)えて、足取りも軽やかにやって来る。心地良い疲れが一日の終わりを告げ、安らぎと寛(クツロ)ぎが約束された憩いの時を想いながら、ジョセフは、ドアが開くのを、心待ちに、じっと待っている。何もかも...
マートレーヤの見た夢。 Maitraya’s dream.
認識のセンチメンタリズム。
古今東西、認識論は、自我と五感に纏(マツ)わる話から出発し、霊感や無意識の話で終わるケースが多い。これは、結局、脳の構造上の機能分化と相互作用に関する知識が全くないまま、自己完結的思考によって、かなり、強引に結論付けているためであるばかりでなく、当時の文化的・歴史的...
幸運の輪 Wheel of Fortune ;煉獄への誘い その7
“識(色)”の顛末。
遡(サカノボ)れば、先ず、世界は、輪環、である、と認知される。それは、洋の東西を問わず、車輪で表わされる。その循環を、輪廻(リンネ)、と、呼ぶ。それは、因縁(インネン)の反復変転する、永劫回帰の閉鎖空間であって、そこから解脱(ゲダツ)して、次なるグレードの世界へ転生するには...
イエスの困惑 perplex(puzzle on Jesus)
日本では、キリスト教の聖遺物というのは、余り知られていない。イエス生誕の時、祝福のため、オリエントから来訪した3博士の遺体が、ドイツのケルンにある大聖堂に安置されていることなど、日本人が知ろうはずもない。況(マ)して、ナザレにあった聖母マリアの生家が、イタリアのレカナーティという片田舎に現存し、天...
ルチア、その伝承と構図、あるいは、神の摂理
聖ルチアは、3世紀ごろ、ローマ帝国時代にシシリー島、シラクサに生きた女性である。当時、国禁の宗教であったキリスト教を信仰していたルチアは、異教徒に求婚され、その欲情を誘った自分の眼を疎(ウト)み、自らそれを抉(エグ)り出して皿に乗せ、求婚者に贈った、という。この話自体が、真偽のほどが定かでないの...
ポーランドの国難と聖母
ポーランド南部の町チェストホヴァは、1381年、聖母が出現した、と言われる町である。この町の“光の山”の頂にあるヤスナ・ゴラ修道院のパトロンヌ(守護聖女)は勿論、聖母マリアであり、ビエルジュ・ノアール(黒衣の聖母)像が安置されている。1978年10月22日、日曜日、就任のミサを終えた教皇ヨハネパウロ2世は、当時...
全能の神の眼 The Eyes of Providence
1ドル紙幣の裏面にあるピラミッドの目。ただならぬ気配を漂わせた図案である。これは、俗に、プロヴィデンスの目、と呼ばれる意匠で、中世以来、主に、エジプシャン・マジックという一種の呪術の世界で使われてきた図案である。1ドル紙幣に採用されたのは、1935年で、比較的新しいが、その基になっているのは、1776年...
教皇庁の腐敗と帝国の動揺;ドイツ3
ザクセン朝の直系は途絶え、若干の混乱はあったが、オットー1世の甥の子であるハインリヒ2世(974.5.6.-1024.7.13.;在位1002-1024)が最終的にその地位を得た。皇帝は先ず、自らの襲職を阻もうとしたザクセン公・ロートリンゲン公ら、諸公の荘園・私設修道院を接収し、司教座教会に委譲した。皇帝は確かに敬虔なキリス...