復活への階段 その6


復活への階段 the stairs to resurrection その6

2021年最後のFOMCが12月15日に終わり,FRBはテーパリングの加速に踏み切った。これまで月150億ドルだった量的緩和の縮小の上限を一気に2倍の300億ドルに引き上げ,来年6月には終了することを明言した。そして,その後は対インフレシフトに切り替え,来年度の金利引き上げも3月から実施することを宣言し,年3回という具体的な回数も明示し,賃金の上昇を前提にした緊縮策を提示した。これは,物価上昇圧力を抑えながら所得の回復を図り,許容される範囲でのインフレ指数を固定化しようとするもので,経済の回復を決定づける政策へ踏み出したと言える。

 一方,中国でこれまでの放漫財政のツケが回ってきている。国有企業を温存するために,地方政府の監督権限の許に広範囲で展開されてきた不動産投資に暗雲が立ち込めてきている。現在問題となっている恒大の債務問題をどう切り抜けるかが一つの焦点ではあるが,これをスケープゴートとしてデフォルトに対する危機意識を地方全体に植え付けることができれば,それはそれで一つの成果と言える。しかし,それがいつもの密室政治の道具に使われるだけの偽装に終われば,それはマーケットへの裏切り行為であり,中国経済への不信は免れようのない失態となるだろう。そうでなくとも共同富裕などと言う,成長率の頭打ち状態を隠蔽し,共産党の責任回避を図ろうとする姿勢は糾弾されてしかるべきだろう。既に党員と民衆の間には覆うべくもない格差が生まれており,そのような施策を敢えて継続することは,実態を偽装し,大衆を愚弄するものと言うしかなく,より混沌として出口の見えないわが国の無能な官僚体制とも通じる欺瞞の衆愚政治という他ない

さらに中国高官は電脳化の急激な発展を怖れ,反抗的成長企業の追い落としに掛かっており,党に忠実な企業だけを残存させようと,選別基準を作り出そうとしている。共産党は,こういった実体経済への無謀な介入が国力をやがて疲弊させ,経済循環の法則を無視したアンバランスな投資が景気後退を招く要因になることを自覚していない。今,世界の工場である中国の経済が迷宮を彷徨い始めたら,その影響は先進国だけでなく,元は素より,ドル債務に苦しむ新興国・途上国の経済に殆ど致命的な衝撃が走る。そうなれば,世界の貿易や通貨体制にも波乱が及ぶのは必至である。習近平が無謀な行動に出ないよう願うばかりである。

わが国日本について言えば,今や世界経済の後塵を拝する経済国家になり,最大の市場である中国経済がその存亡のカギを握る。中国が史上最高のマーケットであることは論を待たない。しかしながら,中国は一党支配の独裁国家,というより,共産党独占国家である。最近は,中華思想家習近平体制の許,軍事大国化を進める世界平和に脅威となる危険な国家に変貌しつつある要注意国家である。確かに隣国の繫栄はわが国にとっても本来喜ばしいことであるはずだが,それも鄧小平の時代までで終わったような気がする。その後の江沢民政権は明治維新後の日本のように先進国に伍していこうという意識が強すぎて,今や中国は富国強兵の鬼になり,他国の意見に耳を貸さなくなってしまった。これは恐ろしいことである。中国ビジネスを生命線とする日本の将来にとって,どのような結末が待っているのか,暗澹(アンタン)たる思いで国際関係の推移を見つめていく必要がある。

 話は変わって。次は,SBIホールディングスの関連事項である。12月16日,新生銀行を子会社化したSBIの次のターゲットは横浜銀行を筆頭とするコンコルディアグループであることは確定的である。しかし,そこには三菱UFJと野村という亜種金融機関が立ちはだかる。既にSBIはSMBC三井住友に合流するという内諾を前提に動いて来ている。これからが北尾CEOの腕の見せどころと言えよう。地銀再建の裏で,静かに進む異業種参入を巡る地方企業のIT化とM&A,これからが見どころということか。
2021年12月18日
Posted by kirisawa
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