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厚労省が今進めようとしている施設介護から在宅看取りへの流れは,これまでの施設介護の弊害である,入居者に課せられる内規の問題では,例によって,臭い者には蓋(フタ)という御座なりな姿勢で対処してきたことが災いして,入居者やその家族と齟齬(ソゴ)が生じることも多かった。そして,ここに来て,施設の過剰な競争と人材の確保といった点で,現況を維持することすら,維持できなくなりつつある。こうした行き詰まりから,脱却しようと,サービス付き高齢者住宅という新たな,比較的,小規模でも運営可能な制度を打ち出してはみたものの,既存の施設が衣替えをしただけの,名目上の変化がみられるだけである。
人生100年問題は,既に入口のところで躓(ツマヅ)いてしまっている。施設入居者の待ち人数の増加に施設数が追い付かなったことは過去のこと,概ね,施設人員は埋まってきたが,介護従事者は不足しているのが実態であり,設備過剰という状態に陥りつつある。いわゆる箱物補助金ビジネスと呼ばれてきたこの福祉財団の将来は,今ピークを迎えつつあり,国の言う在宅介護に投入する人材の養成に視点は移っていっている。つまり,国のインセンティヴ(助成金)はナースやヘルパーの争奪戦となっている派遣会社に集中するようになっている。
現実問題として,施設介護を受けるのに,都市部では,月当たり入居費は20万円を下らない。郊外でも15万円はする。グループホームの場合はこれより若干安いが,入居時より時間がたてば,徐々に引き上げられていく。入居者の生活自体,下着など不時の出費やこまごまとした購入物と医師の診療費などで月4万はかかるので,月額の支出は合計で30万円くらいと踏んでおいた方がよい。この金額を年金で払っていくのは,昭和2年生まれの人でも難しい。となれば身寄りのない人は初めから無理な相談になる。従って,貯えがどのくらいあれば十分か,という話になるが,所謂,民間の年金保険や借家などの流動不動産からの副収入を若いころから用意しておかなければならない。もし,万一,何の準備も無ければ,それは生活保護の受給手続きをしなければならない。
生きていくということはそういうことである。子や孫も,自分が介護を必要とする頃には,最早中年か,下手をすると老年になっているかもしれず,彼らの生計の方が,ゆとりが無いかもしれない。これは冗談ではない。国がどういう対策をとるかは未知数であり,ベーシック・インカム制度も現実味を帯びてくる。しかし,自己責任というより,自己防衛といった方がよい時代が,既に目の前に迫っている。何か手に職を付けておかないと,悲惨な結果が見えてくる。