You need me, perhaps, or I need you chapter 2


 猫は爪を隠す Cats hide their claws
 最近は、よく猫の爪の手入れに執着する飼い主がいるようだが、それはあくまでも、飼い慣らされた家猫に限定されていて、必ずしも、猫族全体が爪を短く揃(ソロ)えている訳でもなく、そういう風潮が先進国を中心に、ペット礼賛のブームに便乗して流行しているというだけである。猫は本来、狩猟によって、食物を獲得し、生きることを前提に進化した生き物であるから、例え、品種改造などで不本意な扱いを受けることになったとしても、その最も象徴的部位である爪などを除去するには、解剖学上可能であっても、生体保全の観点からすれば、生理学上不可能であることは明白である。そのうえ、爪は、猫にとって、狩りに必携の遺伝的に備わった器官であって、最も有力な武器であることからも、これ抜きには、猫という存在は成り立たない。爪はそれほどにものを言うのである。
 爪は、また、猫だけでなく、人間の女性にも備わっており、男性のそれとは使用法が異なる。それは、人間の女性にとっては、独特の武器であるだけでなく、その魔性の象徴としての意味を持つ。猫にしても女性にしても、何かしらの非論理性と感性的飛躍が両者にはあり、客観的展開では説明のつかない行動をとる場合があることも否めないが、その目的は図らずも達成されるのであるから不思議である。それにしても、猫も、女性も、何故、似たような性戯をするのだろうか?背中に爪を立てたり、肩をかんだり、猫にとっても、女性にとっても、それぞれに意味のあることなのだろうが。
 1940年、バットマン・シリーズに、初めて、キャットウーマンという女性の猫人間の悪役が、登場した。このキャラクターは、当時流行(ハヤ)った映画「キャットピープル」の猫に憑依(ヒョウイ)された人間をモチーフにしたもので、パクリではあったが、この新たな女性像(?)の出現はジェンダー的に見ても画期的だった。これのどこが画期的かというと、それは、バットマンとキャットウーマンは敵味方でありながら恋仲という不自然な関係にありつつ、しかしながら、相手に対等の立場で向き合うというかなり漸進的な相互承認を行っていたからである。これには、女性を悪役とすることに対する製作者の男性の後ろめたさも勿論あるのだろうが、それを割り引いても男女対等という究極の理想形を標榜したことに驚かされる。
 さて、本論に還るとしよう。能ある鷹は爪を隠す、という諺(コトワザ)は鷹が獲物に近づくまで爪を見せないようにすることから来ている、らしいが、実態を知らないので解説しようがない。一方、猫は獲物に近づきつつ、鳴くこともなく、忍び足である。爪を隠すような素振りもない。では、何故、猫は爪を隠すなどと言われるのか?それは、警戒しなければならない敵と向き合わざるを得ない時は、武器(ここでは、爪)を隠し持っていると思わせるのが上策、という教示による。格言としても、奥が深い。以上、猫の爪のお話。
2019年08月27日
Posted by kirisawa
MENU

TOP
HOME