楽園の破綻 the collapse of paradise その1


 米国債の2年物と10年物との金利差が逆転し(逆イールド)、株式市場は過剰に反応したように思う。マーケットが悲観的だったのは、どう考えても、2020年(来年)のアメリカ経済は、大統領の言う景気の力強い持続、などとは正反対の、出口の見えない長いトンネルの入口に差し掛かるのではないか、という漠然とした不安があったからで、それは、既に、去年の秋頃から囁(ササヤ)かれていた。そして、それは、資金需要を極端に債券市場に依存する構造的問題から提起されていたのである。つまり、株式市場で自社株買いを繰り返し、企業価値を過大評価させるという、些(イササ)か、倫理に反するかもしれない手段を敢えて行って、事業規模を拡張してきた一般企業にとっても、社債募集(販売)は資金調達の生命線であり、金利上昇は命とりなのであった。もし、金利が上昇すれば、債券に買い手がつかない。そうすれば、売り手は資金を確保ができない。資金が滞(トドコオ)れば、株式市場への供給が止まる。
 実に、これは、アメリカ経済のカギを握る小売りの消費動向と、切っても切れない所得の安定と賃金の上昇に不可分に結びついている。株式市場の低迷は、賃金の上昇を停止させ、所得は不安定となり、消費は縮小する。いわゆる不景気である。景気後退がもたらす弊害について、今、述べるのは適切でないので、ここでペンを置く。状況は変わる。悪化しないことを祈るばかりだ。
2019年08月17日
Posted by kirisawa
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