HOME > いでんしじょうほうこうがく その4 進歩か?進化か?当惑の未来。ボクたちは何処へ行ってしまったのか? 最近の投稿 不思議の国の高度理系人材の不足 2 不思議の国の高度理系人材の不足 1 ショートコラムの憂鬱 2022 part 2 知らず語りのレトリック。 幸運の輪 [wheel of fortune];煉獄への誘い その11 アーカイブ 月を選択 2022年12月 (1件) 2022年11月 (3件) 2022年10月 (3件) 2022年09月 (12件) 2022年08月 (4件) 2022年07月 (3件) 2022年06月 (10件) 2022年05月 (4件) 2022年04月 (2件) 2022年03月 (2件) 2021年12月 (7件) 2021年11月 (7件) 2021年10月 (9件) 2021年09月 (3件) 2021年08月 (10件) 2021年07月 (5件) 2020年11月 (10件) 2020年10月 (6件) 2020年09月 (8件) 2020年08月 (11件) 2020年07月 (12件) 2020年06月 (15件) 2020年05月 (11件) 2020年04月 (3件) 2020年03月 (11件) 2020年01月 (3件) 2019年12月 (3件) 2019年11月 (9件) 2019年10月 (5件) 2019年09月 (5件) 2019年08月 (5件) 2019年07月 (7件) 2019年06月 (6件) 2019年04月 (1件) 2019年03月 (5件) 2018年12月 (4件) 2018年11月 (1件) 2018年08月 (2件) 2018年05月 (2件) 2017年11月 (1件) 2017年08月 (1件) 2017年06月 (2件) 2017年05月 (1件) 2017年04月 (2件) 2017年03月 (3件) カテゴリー カテゴリーを選択 コンピューター AI トピックス ドイツ ネコ 世界 人 占い 哲学 地球 宗教 工学 心理学 手塚治虫 文学 歴史 環境 生活 生理学 真理 社会 神聖ローマ帝国 科学 経済 自我と人格 言葉 言語 近代ドイツ 運命 音楽 いでんしじょうほうこうがく その4 進歩か?進化か?当惑の未来。ボクたちは何処へ行ってしまったのか? その山をふじ(富士=不治)の山とは名づけける ボクたちは何処へ行ってしまったのか? Where have we gone ? part 1 脳疾患障害は、昔から精神障害と呼ばれてきた歴史があり、意識上の錯乱を意味する、特異な障害とされてきた。しかし、これは大きな誤りであり、脳機能の著しい低下、もしくは、変動を伴った昂進状態であって、意識上の異常は波及的障害であり、確かに、不可逆的な場合も無いとは言えないが、現在では、復旧の可能性も十分ある生理学上の機能障害と位置付けられている、と言って良いのではないだろうか? 治療は脳生理学からのアプローチによる研究が急速に進み、対処療法の化学物質の継続投与が中心ではあるが、大部分の患者の症状を緩和するのに役立っている。この臨床研究とは別に、実験的な脳科学の世界からも、疾患に応じた実証的な病巣のメカニズムを明らかにしようという野心的な試みも始まっている。統合失調症・双極性障害・うつ病などの情動性障害(気分障害)を中心に、研究は進められており、統合失調症のような、興味・嗜好の抑圧的遮断によって生じる、蓄積された憤懣と被害意識に圧迫された自我の窒息は、ある時は、双極性障害に類似する症状を、ある時は、てんかんに似た症状を引き起こすこともあり、実際には、特定は難しく、追い詰められた破壊衝動や感情爆発に至って、漸(ヨウヤ)く診断できることもある。しかし、この疾患の病巣の因果関係は比較的、現象遡及、あるいは、行動追跡という観察・分析の手法によって、特定しやすい。だが、この生理学上の化学的メカニズムの解明は難しく、遅々として進んでいない。現在、関連する100個以上の遺伝子が確認されているが、それらが、どういう意味を持つのか、未だ、特定できていない。一方、双極性障害は比較的、研究が進んでおり、そのメカニズムも注目すべき成果が、かなり得られているので、今回は、この研究に焦点を当てて解説していく。 双極性障害は、昔、躁うつ病と呼ばれていた脳疾患で、激しい高揚感でトラブルを起こしたり(躁状態)、何もしたくない、出来ないと言っては落ち込み(抑うつ状態)、それが交互に波状する、情動上、極めて不安定な病気であり、うつ病の病態とは大きく異なるとされる。研究のため、臨床を経験した医師の全員が、症状の出ていない常態の患者と接し、心の病ではなく、脳自体の疾患であると直感した、と証言しているほど、心という言葉の曖昧さは、今、明瞭である。しかし、神経系に病変は見つからず、メカニズムの解明は困難を極めた。情動性障害のような脳疾患では、障害的痕跡の有無はむしろ問題ではなく、遺伝的要素(DNA、及び、遺伝子)と外部環境の相互作用に発症の因子を見出すべきで、その二つの因子の特定こそが解明の鍵であることは直ぐに推理された。再現確認のために、ヒトに近いモデル動物による実験が行われ、発症、症状、経過が観察され、立証された。しかし、ヒトと動物とでは、必ずしも、全てが一致するわけではなく、見つかった相違点について合理的な境界線を引くことになる。ところが、近年、これについても、症状別相違点の境界線について、つまり、神経か、精神か、ではなく、臓器である脳、で良い、という判定がなされるようになってきた。要するに、哲学的に言えば、懐疑的認識の時代は終わり、論理的確証の時代に入った、と言ったところである。 双極性障害の関連遺伝子は、まだ10に満たない。遺伝子と疾患の相関を調べる研究は、どの分野でも飛躍的な発展を遂げ、その功績も大なるものであるが、脳疾患障害の場合も、例外でなく、ゲノム・リーディング(全遺伝子解読)という手法によって、画期的な成果が上がっている。特に、双極性障害における患者とその両親とのゲノム配列の比較研究(トリオ突然変異比較)では、患者から発見される世代交代後の突然変異が発症メカニズムの重要因子である可能性が指摘されるようになっている。この方法で、日本では79家系を対象とする調査が実施され、トリオ比較の結果、その患者全てに世代を越えた突然変異(デノボ突然変異)が見つかった。未だ断定はできないが、気分障害には、何らかの生殖行動に由来する成長因子の変異が関与しているのかもしれない。さて、遺伝子解読(リーディング)は、自閉症や統合失調症のメカニズム研究にも用いられるようになってきており、欧米では特に盛んで、2500家系の自閉症の患者が調査の対象となり、世代交代後に起きる突然変異が自閉症の発症に関わる重要なファクターであることも分かってきた。 ここで、一つの可能性としてであるが、細胞で起きる様々なタンパク質の関与する相互作用の裏では、一連のカルシウムの触媒的活動があり、それはカルシウムシグナル、又は、カルシウム衝動とも呼ばれることもあるが、要するに、細胞内にカルシウムイオンを流入させたり、細胞外に流出させたりすることによって、カルシウム濃度を調節し、脳内において、神経伝達物質の放出、記憶や学習の動作におけるシナプスの調整、ホルモン分泌の制御など、それ自体の運び手・担い手として、重要なメイン・フレームの役割を果たしているのではないか、と推定される物質なのである。ここで、何故、急に、カルシウムが問題となるのか、と言えば、実は、カルシウムという物質は昔から、双極性障害の原因の一つという嫌疑をかけられた曰く付きの物質だったからである。そして、これには具体的な、だが、余り合理的とは言えない理由が存在した。それは、この疾患の第一の選択薬が、リチウムであったことである。 心理学 生活 社会 科学 2020年11月01日 Posted by kirisawa 戻る
ボクたちは何処へ行ってしまったのか? Where have we gone ? part 1
脳疾患障害は、昔から精神障害と呼ばれてきた歴史があり、意識上の錯乱を意味する、特異な障害とされてきた。しかし、これは大きな誤りであり、脳機能の著しい低下、もしくは、変動を伴った昂進状態であって、意識上の異常は波及的障害であり、確かに、不可逆的な場合も無いとは言えないが、現在では、復旧の可能性も十分ある生理学上の機能障害と位置付けられている、と言って良いのではないだろうか?
治療は脳生理学からのアプローチによる研究が急速に進み、対処療法の化学物質の継続投与が中心ではあるが、大部分の患者の症状を緩和するのに役立っている。この臨床研究とは別に、実験的な脳科学の世界からも、疾患に応じた実証的な病巣のメカニズムを明らかにしようという野心的な試みも始まっている。統合失調症・双極性障害・うつ病などの情動性障害(気分障害)を中心に、研究は進められており、統合失調症のような、興味・嗜好の抑圧的遮断によって生じる、蓄積された憤懣と被害意識に圧迫された自我の窒息は、ある時は、双極性障害に類似する症状を、ある時は、てんかんに似た症状を引き起こすこともあり、実際には、特定は難しく、追い詰められた破壊衝動や感情爆発に至って、漸(ヨウヤ)く診断できることもある。しかし、この疾患の病巣の因果関係は比較的、現象遡及、あるいは、行動追跡という観察・分析の手法によって、特定しやすい。だが、この生理学上の化学的メカニズムの解明は難しく、遅々として進んでいない。現在、関連する100個以上の遺伝子が確認されているが、それらが、どういう意味を持つのか、未だ、特定できていない。一方、双極性障害は比較的、研究が進んでおり、そのメカニズムも注目すべき成果が、かなり得られているので、今回は、この研究に焦点を当てて解説していく。
双極性障害は、昔、躁うつ病と呼ばれていた脳疾患で、激しい高揚感でトラブルを起こしたり(躁状態)、何もしたくない、出来ないと言っては落ち込み(抑うつ状態)、それが交互に波状する、情動上、極めて不安定な病気であり、うつ病の病態とは大きく異なるとされる。研究のため、臨床を経験した医師の全員が、症状の出ていない常態の患者と接し、心の病ではなく、脳自体の疾患であると直感した、と証言しているほど、心という言葉の曖昧さは、今、明瞭である。しかし、神経系に病変は見つからず、メカニズムの解明は困難を極めた。情動性障害のような脳疾患では、障害的痕跡の有無はむしろ問題ではなく、遺伝的要素(DNA、及び、遺伝子)と外部環境の相互作用に発症の因子を見出すべきで、その二つの因子の特定こそが解明の鍵であることは直ぐに推理された。再現確認のために、ヒトに近いモデル動物による実験が行われ、発症、症状、経過が観察され、立証された。しかし、ヒトと動物とでは、必ずしも、全てが一致するわけではなく、見つかった相違点について合理的な境界線を引くことになる。ところが、近年、これについても、症状別相違点の境界線について、つまり、神経か、精神か、ではなく、臓器である脳、で良い、という判定がなされるようになってきた。要するに、哲学的に言えば、懐疑的認識の時代は終わり、論理的確証の時代に入った、と言ったところである。
双極性障害の関連遺伝子は、まだ10に満たない。遺伝子と疾患の相関を調べる研究は、どの分野でも飛躍的な発展を遂げ、その功績も大なるものであるが、脳疾患障害の場合も、例外でなく、ゲノム・リーディング(全遺伝子解読)という手法によって、画期的な成果が上がっている。特に、双極性障害における患者とその両親とのゲノム配列の比較研究(トリオ突然変異比較)では、患者から発見される世代交代後の突然変異が発症メカニズムの重要因子である可能性が指摘されるようになっている。この方法で、日本では79家系を対象とする調査が実施され、トリオ比較の結果、その患者全てに世代を越えた突然変異(デノボ突然変異)が見つかった。未だ断定はできないが、気分障害には、何らかの生殖行動に由来する成長因子の変異が関与しているのかもしれない。さて、遺伝子解読(リーディング)は、自閉症や統合失調症のメカニズム研究にも用いられるようになってきており、欧米では特に盛んで、2500家系の自閉症の患者が調査の対象となり、世代交代後に起きる突然変異が自閉症の発症に関わる重要なファクターであることも分かってきた。
ここで、一つの可能性としてであるが、細胞で起きる様々なタンパク質の関与する相互作用の裏では、一連のカルシウムの触媒的活動があり、それはカルシウムシグナル、又は、カルシウム衝動とも呼ばれることもあるが、要するに、細胞内にカルシウムイオンを流入させたり、細胞外に流出させたりすることによって、カルシウム濃度を調節し、脳内において、神経伝達物質の放出、記憶や学習の動作におけるシナプスの調整、ホルモン分泌の制御など、それ自体の運び手・担い手として、重要なメイン・フレームの役割を果たしているのではないか、と推定される物質なのである。ここで、何故、急に、カルシウムが問題となるのか、と言えば、実は、カルシウムという物質は昔から、双極性障害の原因の一つという嫌疑をかけられた曰く付きの物質だったからである。そして、これには具体的な、だが、余り合理的とは言えない理由が存在した。それは、この疾患の第一の選択薬が、リチウムであったことである。