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11月、一時的に長期金利が上昇して、ニューヨークの一部の不動産価格に下降傾向がみられ、REITが不安定化する事変が起きたが、これも大きな波乱要因にならず、株式市場は最高値を更新し続けている。しかし、市場が危険水域である、という認識は広く共有されており、いつ何時、パニックが発生しても、おかしくはない。
株高とともに、債券市場にも資金が流入しているのは、やはり、リスク・ヘッジ絡みの動きと考えらてきたが、すでに周知のとおり、その大半は社債投資に向かったものであり、企業の自社株買いの調達資金に置き換わっている。つまり、投資家側も企業側も互いに、両天秤をかけた形になったわけで、このバランスは非常に危うい薄氷の均衡なのである。この上昇トレンドの正体を見定めもせず、今や、資金はジャンク債へとなだれ込んできている。一般投資家の目は高値に近づきつつある株価から、まだ利回りを幾分かでも確保できそうな商品へと移ってきたのだが、2週間ほど前から、その資金がCCC以下のジャンク債にまで流れ出している。
これをどう見るか?緩和策の結果、潤沢な資金が債券市場の底辺にまで及んだからなのか、上昇トレンドの終着駅が近づき、皆が駆け込みに走っているのか、又は、単なる偶然の符合なのか。この引き金が、もし、FRBの先日の短期金利急上昇対策、4900億ドル(53兆円)の緊急買い付け資金の発表にあるとすれば、これは上手の手から水が漏ることになったということか?何れにしろ、FRBのバランスシートは金利据え置きとはいえ、4兆5千億ドルとQE(量的緩和)状態に近づいており、インフレを喚起できるかどうかはわからないが、十分な緩和状態にある。このまま、年明けまで、状況が変わらないとすると、次は予算成立のタイミングが一つの山場となりそうであるが、それは、国債増発と財政赤字の問題とに左右されそうである。
因みに、今年のリセッション観測は、時の人であった債券王ジェフリー・ガントラック氏の発言に振り回され、何度か軌道修正されたが、1500億ドルを債券市場で運用する彼の動きには来年も注意が必要である。また、債務問題については、インフレによる適正な物価上昇が無ければ、瞬間的にでも、長期金利が上昇する局面が来た場合、金融当局の対応が後手に回ると、信用収縮の危険があることにも留意しなければならない。今回の上昇局面がどのような形で終息するか、は、実は、積みあがった債務の償却の問題と密接に絡んでおり、予断を許さない。儲けと緊張の日々は続く。