楽園の破綻 the collapse of paradise その2


 マーケットは縮小均衡の様相である。9月の利下げは予定通り行われたが、FRBの面々はおっかなびっくりといった感じである。何が飛び出すか、わからないマーケット外の場外乱闘が目立つ昨今、落ち着いて、長期の金融政策を策定するには、環境が不透明すぎるきらいがあり、慎重にも慎重な安全運転は年末まで続くと見た方がよい。それにつけても、来年度の予算編成に向け、インフラ関連企業の請託が本格的に始まっているという。既に国防関連予算は確定済みで、議会待ちという情報もある。来年度は大規模な赤字国債の発行が予定されており、事業資金を獲得するための激しいロビー活動が活発になっているのである。
 マーケットは、9月下旬の時点では比較的落ち着いているが、米中間の駆け引きによっては10月下旬にはどうなっているか、定かではない。株価の変動に対する警戒感は、まだ退いていない。関税の応酬による業績の影響が表面化する12月には、欧州の景気後退は必至で、低迷する世界貿易がそれに追い打ちをかけることになるだろう。デフォルト企業の目立つ中国経済は全体的に沈滞するが、ひょっとすると5Gの主導権を握るかもしれない。少なくとも、米国が主導権を握ることができるのは、南北米州・日本・イスラエル・東南アジアくらいである。ファーウェーの復活は確実で、明らかに近未来の中国の成長エンジンとなるだろう。
 米国の関心は不動産価格の変化に移っている。貿易停滞の余波は、今、不動産価格に及んできている。この1年REITは安定していたが、不動産価格の停滞が一部で見られるようになった8月以降、不動産債権やモーゲージ債の価格は下落し始めている。赤字国債の大量発行が予定されていることもあり、これがいいことなのか、悪いことなのか、見極めがつかない。

 clo(Collateralized Loan Obligation)とは、資産担保証券の一種で、金融機関が事業会社向けに貸し出している貸付債権を証券化したもの、即ち、ローン担保証券のことをいう。どんな点が有利か、というと、資金調達に、より機動的に対応できることと、元来流動性の低い貸出金であるローンからさらに市場性の高い債券に振り替えることができる点である。
 近年、米国を中心に、レバレッジド・ローンの拡大が続いているが、その一部として、このcloを組み込んだファンドの数が急速に伸長しており、日本の機関投資家もこぞってこの動きに便乗しているが、消費の停滞に弱い、なおかつ金利の上昇にも敏感なこの商品については、実は、慎重な見方も少なからずあることも念頭に置いておかなければならないのではないだろうか。現段階でのポートフォリオに占める割合も統計的な資料はなく、拡散する勢いだけで買いに走る傾向が顕著であり、警戒を要する商品といえる。
2019年09月24日
Posted by kirisawa
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