復活への階段 その10


復活への階段 the stairs to resurrection その10
2022年8月,アメリカの物価上昇率は止まらず8%前後を推移しており,FRBの目算は外れ,インフレと物価高と公式には認めたがらないリセッッションが交錯する局面を迎えつつある。9月21日のFOMC会合では前月に続き0.75%の利上げを行ったが,国内のインフレの拡散を止められないだけでなく,内需拡大を急ぐアメリカ一国のドル高によって,国際通貨市場の変調が停まらない。EUとイギリス,カナダ,オーストラリアだけは共に利上げでアメリカに追随する気配だが,中国とインド,トルコは独自の経済政策をとり,ドル急落という不測の事態にも対処する余地を残しておく政策のようである。国債を乱発し,選択肢のない日本も,円安には為替介入という非常手段をとるしかなく,今期の輸出による企業業績をにらんでの取引となる。

アメリカの自国内自国販売の流れも定着しつつあり,それは不動産と物流の分野に顕著である。不動産では,ロボティクス化された倉庫と計算センターの需要は旺盛で消費者のより近くにという物流の流れを後押ししている。物流は国内サプライチェーンの構築と並行して計画されており,必要物資は自国調達が原則とされている。この物流網で大きな役割を果たすのがEV化された交通網であり,EVステーションの整備の全国化である。つまり,アメリカは消費者の直近からグリーン化を進め,今そのための新インフラ整備に注力しているのだ。

その周回遅れで後に続くのが欧州で,こちらでは,先ず電力問題から解決していかねばならない。それは実は資源問題であり,原発問題でもある。これは直近のこの冬の電力需給の見通しを立てることから始めなければならない。そのさらに周回遅れで日本がいる。日本は債務超過で,日銀の国債買い越しをいつまで続けられるかが当面の問題である。円安は,輸入物価に直結する問題だけにそれは食料価格に直結することを意味する。今この時点でいえば,アメリカ経由の飼料・食品の高騰は避けられない。この差額も国債で賄(マカナ)おうとすれば,対米公約である防衛費用負担への影響も出てくるものと思われる。それよりも国内産業へのインセンティヴはどうするのか,が,まず問われることになりそうである。

ウクライナ戦争での有事ドル買い・金買いも加わって,株安はペースを上げており,底値がどこか,ということだけに関心が集まっているように見えるが,アメリカの雇用,所得,物価の水準には特に留意すべきだろう。FRBの次の会合は11月であるが,それまでに市場の情勢が好転,即ち,インフレ率が想定よりも低下することを期待したい。
2022年09月28日
Posted by kirisawa
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