楽園の破綻 the collapse of paradise その11


国際物流の停滞が、今、ようやく始まった経済復旧に影を落としている。パンデミックのため、航空機の乗り入れ制限や船舶の入港制限が常態化していたが、6月から、状況に応じて緩和する措置が取られるようになってきた。しかし、物流の輸送コストは高止まりしたままである。これが、輸入産品に跳ね返り、日用品の小売価格を押し上げたりして、物価上昇の一因になる可能性がある。航空貨物は、元々、輸送専用機は少ない。それで、便数の多い旅客機の半分を貨物部分として運航しているのだが、パンデミックで、事実上、各国の空港が乗り入れを制限したため、減便を余儀なくされ、結果、物流も停滞する事態となってしまった。これにより、輸送コストは急上昇し、それがそのまま、下がらないのである。海運は、というと、これは、もう論外で、パンデミックで、外国籍の船舶は入港拒否、船員の上陸を禁止する、という措置をとる国が続出し、一時は、物資の陸揚げどころではなくなったほどであり、現在、人員的にも対応できていない。従って、輸送コスト自体まちまちであり、算定できない。そういう訳で、物資の滞留が長引けば、ボクたちも、想定外の物価の変動に見舞われることもあるかもしれない。

6月8日、SBIホールディングスは、日本政策投資銀行・新生銀行・山口フィナンシャルグループの3金融機関と共同で、地方企業の経営支援・販路拡張・現代化のアドヴァイス、地方ヴェンチャーの育成・起業促進、に重点を置いた、地域経済の課題解決のための支援法人の設立構想を発表した。法人名は、地方創生パートナーズ株式会社。社長には、SBIの北尾CEOが自ら就任することになっている。北尾氏は、先のZホールディングスや三井住友SMBCフィナシャルグループとの提携を軸に、日本の銀行業界の新時代への脱皮を図っているのであり、この地銀再生の旗を振ることで、業界全体のデジタル化、リモート化の道筋をつけ、ITネット時代に相応しい新たな形態へと変換させようという、いわゆる、デジタル・トランス・フォーメーションの具現化、という、野望を実現させる足掛かりにしようとしているのである。

北尾氏は、一つの見本として、シンガポールのDBS銀行を例に挙げる。それは、北尾氏の言うところの「オープン・アライアンス」の実例であり、それを実行することが、次代の銀行経営の要(カナメ)となる、と彼は確信しているのである。それは業態を跨(マタ)いだ協業関係から派生的に生み出される、偶(タマ)さかの創造物であり、ステークホルダー全員で分かち合う、ウィンウィンの産物ということになる。様々な業種が、異業種同士が参入し、次々、新しい産物が生み出され、多様で、変化に富んだ、個性的な商品が市場に送り出され、広範囲に、多角的な取引が行われる。そうしたイメージではないか。しかし、現実は、そうした善良な取引だけではないはずだ。落とし穴は、きっとある。だが、保険をかけて、彼の冒険に付き合ってみる価値はあるかもしれない。他に道がないのなら。

6月22日、横浜銀行・東日本銀行を傘下に持つ、日本最大の地銀グループ、コンコルディアグループは、SBIホールディングスが主導する、地方創生パートナーズ構想へ参加する、と発表した。その動機とは、地方企業のデジタル化の遅れを、地銀が率先して電脳化することによって、一気に挽回し、新時代の経済の流れに追いつき、喰らいついてこう、というものである。この参加表明によって、全国の地銀は、時代の変わり目と胎動を改めて知り、迷妄の眠りから覚醒することが期待されている。
2020年06月27日
Posted by kirisawa
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