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6月10日、FRBは、FOMC(連邦公開市場委員会)会合で当面、量的緩和政策を維持するとともに、2022年までゼロ金利政策を続けることを決めた。パウエル議長は、利上げは全く考えていない。経済の下支えが第一の使命であるが、時間がかかるのが問題だ。と述べる一方で、雇用統計はうれしい驚きだった。などと、お手盛りの一時凌(シノ)ぎを自画自賛したりした。しかし、賢明なる議長はその見識を示すことも忘れなかった。つまり、現在の問題の本質は、パンデミックに端を発した経済のひっ迫による資金不足と雇用喪失にあり、それは供給サイドと現金の需給バランスの問題である、という誰にでも分かる構造を端的に指摘しつつ、資金需要の拡張に対応していく姿勢を、次のように述べた。今後の経済は全く不確実だ。景気の見通しは改善する前に悪くなる。それでも、雇用情勢に目途(メド)がつくまで、ゼロ金利は続ける。バイアスは金融市場と経済への追加支援に掛かっている。要するに、議長は、財政出動のさらなる拡大を行政に求める姿勢を示し、今、財政再建や縮小均衡への道を歩むことは経済の失速・破綻を招く、と警告したのである。この意を理解できた政治家がどれほどいたか、定かではないが、これから来る世界的な底知れぬ不況の影を、議長も感じているのは確かなようである。因(チナ)みに、FRBの経済予測を見ると、米国経済は、5月は改善したものの、今後はかなり悪化していく、と予想している。
米国のGDP成長率見通しは、2020年が-6.5%、失業率の見通しが、2020年13.3%、2021年6.5%、2022年5.5%(2019年の4.4%の水準に戻るには、時間を要する)、インフレ率見通しは、2020年0.8%、2021年1.6%、2022年1.7%、と2.0%を下回る水準で推移する見込みで、米国経済再建は茨(イバラ)の道と言う他ない。今回、規定事項となっていた量的緩和買い入れ枠も明示された。即ち、国債などの買い入れ枠は、月額1,200億ドルと明記され、この水準を維持するとされた。
こうした下方修正の統計の予測をものともせず、ナスダック総合指数は10,000ポイントの大台を突破、もはや、金融緩和の長期化で長期金利が低下したため、という理由だけでは説明が付かない躍進ぶりとなった。そこで囁(ササヤ)かれるのが、ネット証券への若年層の個人投資家の急激な増加である。新たな資金が景気に左右されにくい、若者に人気のハイテク株に集中して流入している現状とも一致する。一方、金利が上がらないので、貯蓄より投資という流れも加速し、銀行株は売られる展開となっている。しかし、いくらGAFAが牽引役になっているとは言え、又、ESGやSDGsが若者の投資の目安になったとは言え、マーケットは過熱状態であり、経済の実体からかけ離れつつあるように見える。この夢遊状態の経済が、何故、成り立ちうるのか、と言えば、それは、偏(ヒトエ)に、電脳化された経済だからである。既に、経済は、統計予測の世界、言うなれば、ヴァーチャル、仮想の世界によって成立しているのが実態で、アルゴリズム・トレーディング抜きでは取引は成立せず、ヘッジファンドが裁量取引を行えば、サーキット・ブレーカーに引っかかり、もう、マーケットは仮想と現実の綱引きの場となってしまっている。5Gに象徴される、まだ見ぬ現実(即ち、仮想)が廃れ行くビフォア5G・ウィズコロナの非デジタル社会を、今、ボディー・ブローのように打ちまくっているのが現実である。世界は、天文学的数字の債務が積みあがった未知の領域に入ろうとしているが、その行く先を知る者は誰もいない。