5月27日、FRB地区連銀経済報告(ベージュブック)2020が発表されたが、それは予想された通りの内容で、特段、大きな影響を市場に与えるものではなかった。ただ、企業は全般的に資金繰りに苦慮しており、大半の地区で生産は急激に落ち込み、支払いの遅延、未納が起きている。民間銀行では、PPPローン(Paycheck Protection Program Loan;コロナ救済策の一つ。雇用を維持するため、一定条件を満たせば、2カ月半の運転資金の返済が免除されるローン)の利用者が激増していて、資金不足に拍車がかかっていることが分かる。しかし、全容は、既に、決められたシナリオに向かって、経済復旧の旗は降られており、七割戻しの合言葉の下、着実に回復が図られようとしている。それでも、パンデミックの脅威は忘れ去られたわけではなく、ヴァクチンの開発は真剣に待たれており、治療薬の開発も、又、然りである。
こうした状況の下、日本の実情は、と言えば、秋にも予想される、雇用情勢悪化に伴うローン破綻をきっかけとする金融不安が、地銀各行に圧(ノ)し掛かり、その経営問題が、直近の課題として浮上してくる恐れがあるため、関係省庁は、遅ればせながら対応に乗り出す準備を始めた。これまでも、金融庁は、現行法に抜け道を作って、地銀に副業をさせたり、越境提携を認めたりして、何とか、収益の改善を試みてきたが、抜本的な改革には手を付ける余裕も、手段もなく、ただ傍観者を決め込んでしまっていた。そのうちに、時は無情に過ぎ、成す術もないままに、第2地銀などは、2期以上連続赤字の経営が慢性化してしまい、ほとんどが身動きの取れない状態に陥ってしまった。
ここで、登場したのが、SBIホールディングスである。言わずと知れた北尾吉孝CEOをトップとするフィンテック・ファイナンス企業が、野心たっぷりの拡大戦略として、地銀との再生・提携方針を打ち出したのである。先ず、手始めに、山陰と東北の地銀と組んだSBIは、アナウンス効果だけで、全国区の存在となった。その成果は、まだ、無いに等しいが、それでも、この4月28日、SBIはフィンテック企業として、決定的となるヒットを放った。青天の霹靂(ヘキレキ)、三井住友SMBCフィナンシャルグループとの将来に向けての合流を目指したモバイル・ネット証券での提携である。両社は、モバイルを通じて、商品の相互交換を図るだけでなく、資本出資を含む親密な提携関係に入ることで合意した、という。金融は、テクノロジーの時代に入った、と言われて久しいが、地銀はまさにフィンテックから取り残された、陸の孤島であった。SBIが、これを足掛かりに、地銀ネットワークを生かしたファイナンスとネット・ショッピングを連動させたシステムを運用して、アマゾンやフェイスブックと同じビジネスモデルの構築を図ろうとしていることは一目瞭然である。金融庁も異種混合ビジネスの拡張をどこまで容認するか、今後が注目される。