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まず、恋愛活動とはヒト特有の求愛行動のことを指していると思われる。ヒトの場合、性的成長は10代の前半から始まり、個体は各々既定の段階に達すれば性行為自体は常時可能となるが、身体の成長はまだ続いていることから20代の半ばまでは性的にもまだ成熟したとは言えない。しかしながら、機構はすでに起動しているので、発情sexual excitement状態になっても不思議ではない。ここが他の動物と大きく異なる所であり、性行為そのものも特定の集団の秩序を維持するために公然と行うことは忌避されている。この点も他の動物とは異なるが、これも集団の性格の違いから生じるものだろう。ヒトの生活圏はいくつもの集団の組み合わせであって重なり合って成立している。ヒト自身はその中で様々な存在価値を発見し、自らの自我と人格を調和させ成長していく生命体であるので、発情期を限定して世代交代する他の動物とは集団の秩序構造そのものに相違がある。又、ヒトと文明という観点から考えると良きにつけ悪しきにつけ、集団の秩序は意識付けが強力にはかられていることから、その余りヒトは自由に身動きがとれなくなった動物と言うことができるかもしれない。
それでもヒトは種の存続というあやふやな動機のまま恋愛に疾る。恋愛相手(対象)をどういった基準で選ぶかというと、これは10歳以前の主に大脳辺縁系(第2層の脳)に蓄積された情動記憶が大きなウェイトweightを占める。この初期情報に後発の価値情報が加わり、20代の人格の骨格が散見される頃には、かなり具体的な人物像(主に異性。理想化されているかどうかは問題ではない。)がその対象としてイメージimageされるようになる。最も10代ですでに相手を見つけ、生活している個体もあるので、上述したことは必ずしも当てはまるとは限らない。
一般に恋愛のゴールは結婚ということになっている。しかし、このような、いかがわしい(dubious)結論は、価値についてより懐疑的になっている21世紀の今日では通用しない。大体、恋愛で最も重要なのは、互いの尊重、言い換えれば、人格の相互承認に行き着くのであり、それは既述のとおり報酬系(ドーパミン神経系・A10神経系)に裏打ちされた自己承認欲求に起因する人間関係の基本認識、他者理解のことなのである。
ヒトをヒト足らしめている比重の大きなものの一つに”愛”がある。これは他者理解と共感(sympathy。行動を伴うものはempathy。)を中核とした深い感性を有する情動記憶が意思決定に反映されたものと見て取れる。要するに大脳辺縁系(第2層の脳)の深部構造である、大脳新皮質(第3層の脳)との境界領域において行われる化学的・電気的相互作用(科学的・物理的反応による変化)そのものがそれであるが、恋愛のシステムについて言えば、前頭前皮質(第3層の脳)の意思決定や予測の機能に影響を及ぼしていると思われる前部帯状回皮質(第2層の脳)という部位、神経伝達物質としてフェニルエチルアミンphenylethylamineがあり、ここでは、これらに絞って考察していこう。