風が女神たちの薄絹を剥ぎ取り，その艶めかしい裸身を露わにした，昼下がりの午後，聖愛（性愛）の天使たちは，神の僕（シモベ）たる使徒たちと交わり，愛欲の精液に塗（マミ）れ，使徒の使途たる所以（ユエン）である神からの恩寵（オンチョウ）のエクスタシー（ecstasy）を得るために，皆，性戯に励む。互いを愛し，確かめ合い，満足するために，愛を楽しみ，苦楽を共にする者として。そして，子を成す者として。夜となく，昼となく，都会の温室の中で，あるいは，自然に抱かれた郊外のモーテルで，愛は醸成されている。

受胎とは，何か？受精とは？それは子を望む者同士に与えられる福音の印。母が子を望まなければ，子を繋いでいくことは出来ない。様々な事情により，子を成すことのできないカップルもある。しかし，両性の望まぬ行為により受胎すれば，恩寵は得られず，ただ破戒の印を刻印された子が生まれる。それは両性を傷つけ，母体には取り返しのつかない深い傷を残す結果となるのだ。女性には，産む権利もあるが，産まない権利もあるのだ。それが子を成す大前提であり，これから逸脱する議論は理に適（カナ）うものとは言えない。受精し，心音が聞こえれば，一個の生命という主張には，子は愛の結晶という答えで応じるべきであろう。

ちぐはぐな議論の末に養護施設に預けられるケースもあるが，それは否定できないが，本末転倒の結論だと言わざるを得ない。両性に育児の能力が無ければ，女性を不合理な立場に貶（オトシ）めないためにも，中絶を選択して然るべきだろう。受胎ということになれば，女性だけでなく，男性にとっても，重い責任が付いて回るのだから，両性の合意は絶対必要である。親と言うもの同士の愛情に恵まれれば，子はその存在確認としての自己承認行為である愛情訴求で，応えてくれる。我が子の笑顔こそ両性にとって，真からの歓びであるはずだ。子の誕生から，その成長を見守りつつ，両性も成長していく。やがて，子も性愛に目覚める頃，親である両性も，人格的成長の終わりに近づく。子の成長とは，実は，親である両性の自己の追体験であったことも分かり，子の行く末を思案するようになるのが世代交代の真理なのである。

雲は流れ，漂いつつ，碧空（アオゾラ）の彼方に消えていく。時は已むことなく過ぎゆき，生命（清明）のＤＮＡは，何時の日か途切れる時が来るかもしれない。しかし，この生命の壮大なドラマ（drama）には秘められた意味があるのだろう。ボクたちが，その真実に遭遇すること，解明することは，凡そできない相談だ。それは秘められたまま，始まり，秘められたまま，こっそり，終わってしまうだろう。幾億年かの先に，地球は姿を変え，生命は存在できなくなる。果たして，この生命現象とは何だったのか？ボクたちに知る術はない。