楽園の破綻 the collapse of paradise その7


この一週間のコロナショックへの金融当局の対応は、何もしないよりはマシ、といった程度の内容で、完全に後手に回り、タイミング的にも遅きに失した感があることは否めない。問題は、今年の世界経済に与える実質的な、あるいは、実体経済へのダメージが予想の範囲を超えていることが明らかに成りつつあることと、常態への復帰を妨げている欧米での感染の拡大局面が何時収束するか、ということである。この対応策は、欧米の金融当局も、実は日銀のように、量的緩和策として株と社債を買い支えて、マーケットの不安材料を取り除く以外に方法はない。これは、もちろん、邪道であり、モラトリアムを伴うかもしれないが、もはや、中央銀行の建前で、ものを言っている場合ではなく、事態を収拾するために、あらゆる手段を試してみなければならない段階に来ている。このままでは、マーケットの動揺は収まらず、場合によっては、取引そのものが成り立たなくなる恐れもあり、そうなれば、マーケット封鎖である。それは前代未聞である。

これは、事実上の世界経済の崩壊につながる。マーケットが停まれば、通常の経済活動はできない。企業は決済手段として仮想通貨を使うしかなくなる。汎用性があり、決済可能なデジタル通貨は、まだ、無い。今回、ニューヨークで作動したサーキット・ブレーキングが無ければ、株価は奈落の底だった可能性もある。アルゴリズム・トレーディング・システム様様である。ただ、AIのレンジ・マネジメント・ルーチンの情報は未だ、アップデート・データが十分とはいえないようだ。今後、信用リスクの増大に伴って、全てのクレジットを下支えするための財政出動が必ず日程に上ってくる。現在の集権的なドル・ベースの通貨体制がいつまで続くかわからないが、これは一国だけで処理できる問題ではなくなるだろう。

主要7か国のコミュニケーションもようやく始まったが、相変わらず、お互いの顔色を窺ってばかりだと、肝心の中身のある議論にはならず、意気込みだけの建前論に終始してしまうことになる。この手の対策は、一刻も早く、パンデミックを終息させるため、国際的で包括的な医療体制を構築し、速やかに、マーケットの安定を図るため、国際協調による大規模な財政出動を行い、医療体制が万全でない新興国への援助と通貨防衛を実施することに尽きる。
2020年03月17日
Posted by kirisawa
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